人間て不便




視界を貰えたら良いのに、と、常々考えていたのです。
便利で素晴らしいことではありませんか?
私の見えてるものを教えて遣りたいとも
あなたの見えてるものを教えて呉れとも思うのです。

初めに思いついたのは、眼球の交換でした。
安直だったのです。もちろん此れは、駄目でした。
眼球は器官であって、それ以上でも以下でもなく
外して仕舞えばゴミ同然の代物ですから。
安直だったのです。

然すれば、と、行き着いた先は、当然、脳でした。
しかし、現実的ではありません。
私は医者でもなんでも無いのです。
器官ならば兎も角脳は、いっそ本体ではありませんか。
いくら私が興味本位で動く人間と云えども
さすがに此れはそうもいきません。
私だって、死にたくはありませんし。
ならば

ならば、一方的に食べて仕舞えば良いのでは?と
考えついてしまったのです。

いいえいいえ、食べて仕舞ったところで
消化と排泄に終わることは解っていたのです。
ええ、解っていました。けれども。
栄養価の高いものを取り込めば健康に成る様に
何かしらの効能は有るのではないかと
期待をしてしまったのです。

————はい。其れだけです。
————いいえ。
食べられると判断した範囲は全て食べました。
残しては勿体無いと感じてしまいましたから。

人間って不便な生き物ですよね。
他人が居ないと生きていられないのに
他人が居ると比較して、勝手に厭になって仕舞うんです。
視界が欲しかったのも本当に本当ですが
もう叶いませんね。
残念です。




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