かわいいかわいい



あんなに好きだった可愛いの概念が、
いま行方不明なのです。
あんなに拘っていた可愛いの方程式も、
解きかけのまま放り出しています。
あんなに好きだった可愛い耳飾りも、
気が付けば全て標準的な
バーベルかサーキュラーに替わりました。
ときどき問われる中身の話は、
無駄では無かったのかもしれません。

しかしそれはそうとして、
可愛いを行方不明にしたわたしは、
わたしではなくなってしまったのでしょうか。
好きだったものが彷徨って
見えなくなってしまったわたしは、
その瞬間から誰かと入れ替わってしまったのでしょうか。
わたしはDIDではありませんし、
その傾向もありません。

わたしがいままでのわたしと乖離して、
いままでのわたしを見ていた人たちはどうするのでしょう。
そこまで興味はありませんが、
知識は多い方が善いもので、
可視化出来るのならば是非そうしていただきたいのです。
いずれもさまも、平等に、
糸を切って仕舞えばいいなと考えるわけです。

提案する前から糸を切ろうとしていた人たちは、
その選択が正しいことを前提として、
糸をまず投げてきたのはどうしてなのでしょう。
魚は針と糸が無いと釣れませんし、
わたしは単純ですので糸のみでよく釣られます。
しかしわたしを目掛けて投げなければ釣られません。
目に映るわたしはどの様でしたか。

偶然の光に騙された反射物に過ぎなければ、
面白おかしく傷付けるだけで済んだやもしれません。
可愛いが好きだったわたしはわかりやすく
柔らかいものの手触りも好きでしたし、
比較的穏やかだったようにも感じます。

取り込みやすいと感ぜられたのならそれも一興、
釣られましょう。
果たしてその後取り込めましたか。わたしを。
わたしといういきものは鈍いものでして、
教えてもらわなければ何事もわからないのです。
是非、解るように説明してください。

わたしはわたしの有り様を考えてきてはいましたが、
風で簡単にくるくると回る風車のように、
なにもなにも定まりませんでした。
可愛いを基盤にしていた時間は
あるいは長かったかもしれません。
しかし、喪失感などはありません。

同じ四角でも描けば少しずつ狂うように、
一定を継続することは難しい。
わたしにはきっとその技術が無く、才も無く、
そして方法も知り得なかった。

もし帰ってきてしまったらどうしましょう。
わたしの中身はまた入れ替わるのでしょうか。

たいして困りもしていないお話を、
大義名分を掲げて振りかざすのを、
攻撃的に捉えられないかは不安です。
そんなつもりは全くなくても、
わたし以外の主観にわたしは対応しておりませんゆえ、
不安です。
欠片は集めてくださらなくて結構ですよ、
必要になれば拾い上げるか、
そのまま溶かされるだけです。



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