見えない煙



ふう、とひとつ、息を吐いて
その行く末を見守る朝焼けの中
眩しさに少し目を細めつつ
その眩しさの前に愛しさが勝る
僕が埋葬されるときは
屈葬か、あるいは
散骨が良いなあとぼんやりしつつ
死んだあとのことにまで頭を使うなんて
難儀な生物だな、僕らは

叩き落とされる前から知っていたら
それでも本能が勝っただろうか
取り出される前から理解できていたら
それでも此処を選んだだろうか
伸びる伸びる枝の強さを思い浮かべて
想像ではとても近いのに
実際ははるか遠くになってしまうことに
僕はまた息を吐かざるを得ないのだ

行進する肉体はどの条件下で腐敗するのだろう
これは提案ではなく強制の話だ
君がこぼした星屑みたいな言葉を集めた僕は
それを足元に敷き詰めて
ゆっくり歩いて音を確かめる
そんな行進をもう何年も、何年も、
そしてこれからも何年も、或いは何年か
腐敗の条件が満たされるまで、ずるずると

飼い殺すなら冷静に
生殺しなら平常に
とげとげな僕の誤ちも
眺めたいよって笑ってよ
比喩にならない殺人も
悲しむことなく抱えてよ
頬をなぞる風が好きだったから
そこに佇む君をも景色にした
色がなくても空は綺麗だから
それを否定する君だけに色を付けた

容量不足を補うには
僕ではあまりに浅すぎる
いまこの瞬間、目の前にある
光すら真っ直ぐ見られない僕には
叶えられない願いだよ
便利過ぎる言葉を使って
うまい言い訳も出来やしないから
君がこちらに着くまでの間
せめて正しく呼吸をするよ



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