憐情
ひどい憐情だ、此れは
縁でうずくまる子どもを
落とさないように注意深く
複数の にんげん おとな の定義が囲う
揺れる手
落ちればもちろん、真っ逆さま
重力に従う身体
こころは身体に宿るのだから
身体がたとえ残ったとしても
身体をたとえ開いて覗いても
納得しない
囲うのだ
取り逃がしてはならないと
囲うのだ
落としてしまってはかなわないと
囲うのだ
それがおのれの為だと信じて
恐怖に則った博愛を
定義の塊と天秤に掛けて
囲うのだ
ああ可哀想な、存在は
枯れることなく泣き続けるだけで
落ちる力も残っていない
のに
ひろく話をするのなら
それが、許されるのであれば
複数のことも思い遣り
複数のことを思い出し
妨げにならないよう記憶し
模倣し
焦がれ
求める
一方通行であってはならない
双方合意のもとで
仲良く手でも繋げばよりらしく
質量保存の法則の上で
吐き出すには種が必要だから
その種を
供給し続けなければ
と
思う
感じる
考える
曖昧な違いを共有し
憚られる全てを
そう、全てを
協調性もない常闇に
溶かして、混ぜて、
いったい、これは、
底無し沼、か
生き埋めの恐怖と
飼い殺しの苦悩と
暗転して死んでいく 世界 のようなものと
取り残される
可哀想な
存在と
一列に並べて、守れもしないのに
欲張りだから、手を伸ばす
自分に価値を見つけたい にんげん との
終わりが見えず、まわりつづけて
持て囃される、押し問答
回転扉を抜け出すのが苦手な不器用な にんげん も
仕組みが判ればそこからは安易に抜け出して
その先、向かうのは、どこで、なにで、
だれ?
宝石箱にはときめかない
旅はとうてい務まらない
埋まらない胸の中を
とにかく(仮)埋めしたくって
せめてもの求愛と擬似餌を見込んで
星屑を飲み込む
ときめくのはその一瞬
落ちられたら、その先はどんなだろう
重力に負け続けるその先は
信じるものを殺された
その先は
飲み込んだ星屑は
綺麗に散ってくれるだろうか
入れ子人形よろしく見えているものは
なんばんめ の なかみ だろうね
納得できないから殺さない
等しくない
納得できるから生かす
等しくない
もがく腕は空気を刈り取り
それすら可哀想だと掴んで止めた
回顧録
才能のなかった作業人格に
負けるまいと囲う にんげん おとな
その定義
目の前の一切は、変化のないまま
最初から異形を見ていれば慣れるものさ
そして落ちる決心もつかぬまま
美しく不変と相まって
可哀想を唱える為だけの僕が在る
非道い、憐情だよ、此れは
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