ハリボテ



夢の中ですら停止した
見上げた先の君は優しい笑顔をしていて
ああ違うんだなって思ってしまった
ハリボテだと、感じてしまったんだ

自分の物語の冒頭には何と書かれているのだろう
御守りみたいに縋るために下がり続ける
冷たくて鈍くて重たい鎖の説明だろうか
それとも歩くたびに増えていく深い足跡に対する
不恰好な弁解と虚勢だろうか

一見可愛くて器用な後ろ姿をずっと見てきた
世に言う幸せで、世に言う暖かさで
満たされていない方がおかしな設定だった
知らないことを知るたびに歪んだ
一見可愛くて器用な背中が歪んだ
知ることを咎められるたびに途切れた
ぶつぶつと頭の中で鳴る途切れる音
めくってもめくっても終わらないままずっとずっと先まで
不用意に溢れたインクで染まって
ああ、だから知らなかったんだよ
知りたくなかったんだよ
命綱無しで立てるほど僕は強くないんだから

まばたきはいつも透明な膜を連れてくる
排除したいと思っていた、君を連れてくる
神秘だとか、神聖だとか、引き摺り下ろして
ただ愛されていて欲しかっただけなのに
渇くこともきっと許されない
自己犠牲を振りかざして、容赦もない
見えなくなるくらい侵してくれれば良かったのに

体温で補うしかない水温も
でも、沸騰させるにはほど遠いから
縋って生きながらえる
必死に集めた御守りを全部自分にぶら下げて
僕は俗に云う「淋しがり」だよね
軽い左腕はいつでも気持ち悪い

綴られるお話にまだ終わりは見えなくて
冬はこんなに寒くて冷たくて心地良いのに
不相応に感じて、息が出来なくなる
やり方は知っていた?
目的は知っていた?
躊躇なく進めばいい
御伽噺に出てくる悪者にも
平等に冬は寒いんだ

中身のない箱に用はない
だからごめんね、僕は君には用がない
違うなって、感じて、しまったんだ


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