りんりん
世界の倫理を望めないわたくしは
せめてあなたの倫理はと、
過剰な期待を持ちつつも虚無を飼い殺し
その手を透明に濡らすのです。
世界の倫理を望めないわたくしは
せめてわたくしの倫理は渡してはならないと
余剰な芝居を買ってみては喉元に常に
好きなのかもわからないポピーを一輪刺すのです。
あなたはわたしの倫理を
もっと広いものとして扱っていなさる様なのですが、
それがいささか心配です。
あなたの中でわたくしは、
きっとなにものにも耐えられぬ
毒にも薬にもなり得ないただの計算式なのでしょう。
希望した先を見せないわたくしを
さて恨んでくださいますでしょうか。
否ですね。
手探りでただ進んでゆくだけの、
そういう摂理を、その様を、
嬉々として眺めてしまう怪物のことを、
わたくしは何も感じ取ることは出来ませんでした。
例えば其れをズレ、と呼んでしまうのならば、
それは自己紹介なのか
はたまた子どもの発表会なのか、
とんと検討がつきませんもの。
由緒正しきお話ならば、
こんなに説明は必要なかったはずです。
由緒正しき行いでしたらば、
こんなに足跡がいくつも残るはずは御座いません。
昔読んだ書籍の中から抜粋して抜粋して、
いくつもの不自由を憧れと共に懸念して。
思いを馳せた先はどちらでしたか。
神になった気分でしょうか、その居心地は。
しかし仏にはなれぬわたくしたちは
いずれ燃やされてしまうのでしょうか。
ああ、くだ狐に一度会ってみたかったなあと、
ふと思い出してはその度に
不快な顔をするあなたを見て
クスクス嗤うわたくしなのです。
すこぶる機嫌のいい鈴の音が
常にこだましてはいませんか。
耳も良いあなたになら
聴こえるのではと思ったのです。
事実は知りません、事実は知りません、
わたくしは現実のみを、
相応しい道具を使って
まわして遊ぶだけですから。
我儘が過ぎると言われればそれまでです。
気配りのつもりで胸を痛めていらっしゃいますが
本当にただわからない心算を
いつまでお続けになるのでしょう。
よもや理解を判断に書き換えて
愚鈍な振りをしていなさるなんて、
そんな冗談を言うあなたでは御座いませんよね。
きっとあなたもわたくしも、
いいえもっと広い大衆一般、
俗世に取り込まれたまま特別を欲しがるのです。
しかし石ころにも及びはしません。
さすればせめて人間はと、
人間は人間を取り込もうとするのでしょう。
甚だおかしい話です。
そうでしょう?
わたくしはこの手の冗談でなら
いつまでも笑っていられます。
成り立たせなければならないのなら
手段として覚えておいてくだされば、
きっといつでもどこでも便利に他人は殺せます。
恨み辛みが無くともヒトは、
いきおい殺すことも御座いますから。
ひとつ想えば邪魔ができ、
ふたつ想えば目が霞み、
みっつ想えば擦れ違い、
よっつめにはもう叶わぬのです。
ですから、倫理と、呼んでいます。
どうかどうか、下準備は念入りに。
わたくしはか弱い存在ですから、
どうかどうか苦痛は避けてくださいませね。
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