影
ざくざく
ぱきぱき
草木を踏み締める音はきらいではありませんが、黒い影から逃げる夢というものはいつ再生されても不愉快極まりなくまた悍しいものです
ざくざく
ぱきぱき
黒い影はずっと昔から黒い影です、正体は一向にわかりません、黒いまま、ただ黒いままで私のことをずっと追いかけて来ています、ときには立ったまま、ときには歩きながら、そしてときにはものすごいスピードで追ってくるのです
ざくざく
ぱきぱき
さて夢ですこれは夢なのです、黒い影は人型ではありません、丸かったり四角かったり、はたまたでこぼこの説明し難い形をしていたりします。
ざくざく
ぱきぱき
気が付けばすぐそばに来てしまうこともあり私はその度に驚きと恐怖に慄き逃げるのです、足の速くない私ですがかといって逃げないわけにもいきません、逃げなくては逃げなくては、黒い影から、逃げなくては
ざくざく
ぱきぱき
足音なんてしていません、飛んではいません、歩いてもいません、ただ、追いかけてきているのです、ずっとずっと追いかけられています
捕まってしまったらいったいどうなるのでしょう
喰われてしまいますか
取り込まれてしまいますか
痛め付けられますか
それともお喋りが成立しますでしょうか
ああそれにしても悍しい
私以外には見えていない影の其れが悍しい
逃げなくては
逃げなくては
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