全部季節のせいにしたい




埋もれてしまった象徴を
巡る季節のせいにします

持つゆえに持てぬわたしの災いを
見えない季節のせいにするのです

魚眼のレンズでかたどるように
わたしは支配を受けています

しちてんばっとう、たとえ起きても
次の罠には気が付かず

わたしはわたし以外のせせらぎに
ひどくひどく怯えています

つねに望まぬ欠落を
たにんに露呈するさまを
支配と呼ばすなんと呼ぶ?

手の届く範囲にあなたが欲しい
手の届かないところに居るときは
それを考えて止みません

手の届くところに来てくれたなら
わたしは少し、少しだけれど
魚眼のレンズから逃げられそうで

突き落とされたふりをして
自分から海に飛び込んだときも
息が続く限り念じるのは
あなたの意思と優しさで
入水に失敗したあとに
息を吸い込み念じたのは
わたしの未熟と猜疑心

ずるずると伸ばす黒髪は
いわば願掛けのようなもので

「これは象徴ではないの」
「これは災いでもないの」
「持てないよ」
「わたしは持てない」
「それも季節のせいだから」


ひとさしゆびが迷子のときの
あなたはとても空っぽで
わたしが守るのはその空の容れ物
空っぽなことは知っているけど

あなたなら
あなたなら
もうこれは念仏のようなもの
あなたなら
あなたなら
足恭(すうきょう)な過去も否定して
この猜疑心を開拓してくれる

傷口は、開けども開けども
必ずしも血は出てこなくて
わたしが欲しがったのは血液なのか
あるいはただの麻痺なのか
技術が進むのに従って
手錠をかけられる瞬間が伸びるばかり

絡まった要素の塊を
液体であれば流せると勘違いしたのだろうか
透明ではない
透明ではない
とても「溶けた」とは呼べないものに
底を抜くほど分離させても

あたまにいるのはいったいだれだ





フギンとムニン

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